36冊目『モンスターの眠り』エンキ・ビラル【今日のまんが2022】

ずっと気になってたバンド・デシネ作家のエンキ・ビラルを初体験。『モンスターの眠り』日本語版を読みました。監修は大友克洋!

あらすじ

「ブレードランナー」等のハリウッド映画に豊穣な映像イメージを提供し続ける、注目の仏コミック。その第一人者であり、映画監督であるビラルの描く、独特のノスタルジックな近未来の物語。

 河出書房新社公式サイトより

感想

『モンスターの眠り(MONSTER、原題︰Le Sommeil du Monstre)』は、ビラルの代表作である『アッツフェルド4部作』の第1部。孤児仲間の幼なじみ3人をめぐる近未来SFです。主人公が驚異的な記憶力の持ち主で、生まれて初めての記憶はなんと生後18日。そこから生まれた日までの記憶をさかのぼりながら話が進んでいきます。

ビラルの故郷でもある旧ユーゴスラビアの崩壊がストーリーの元になってたり、回想シーンが多かったり、世界観のクセが強かったりと、わたしには難解すぎて1周読んだだけでは全く掴めなかったけど、雰囲気だけでも十分圧倒されました。フルカラーだし、1コマ1コマの完成度が高い。

それもそのはず、今回の作品は1コマずつ個別に描いた絵をスキャンして漫画として構成してて、大きな絵では50cmにもなるのだとか。しかも絵はのびのび描くために、全部立った姿勢で制作してるそう。
さらに色味にも強いこだわりがあって、青い絵具にタバコの灰を混ぜたり、赤い絵具にヒナゲシの花の粉末を混ぜたりといった工夫で独自の空気感を出してます。
(ちなみにフランス語版ではセリフの中の文字が独自の手書きフォント「ビラル書体」になってるらしい…)

文章も多めで全体的に情報量が多いので、1冊読むのにそこそこ体力を使う作品ではありますが、「空飛ぶタクシー」とか「アンドロイド」とか「モグリの医者」とか「レプリカント」とか「マグロの刺し身」といったキーワードにピンとくる人は読んだら良いと思います。ミニキャットも超かわいい! 

わたしは今回図書館で第1部を借りたけど、続きがなかったのでとりあえずお手軽なKindleで買いそろえるか迷い中。絶対大判のほうが読みやすいんだよなあ。

あと、絵からなんとなく弐瓶勉みを感じたので調べてみたら、pixiv大百科には、エンキ・ビラルが弐瓶勉に絶大な影響を与えたという記述があった(ソース不明)。そんでもってエンキ・ビラルも弐瓶勉を大絶賛してるそうで、弐瓶勉の画集『BLAME! and so on』には2人の対談も載ってるらしいんだけど、プレミアついてるから安くても大体1万円はするのね……でも読みたいよね……とりあえずBOOK・OFFの入荷連絡登録しておこうと思います。

メタルギアシリーズでおなじみの新川洋司もエンキ・ビラルから影響を受けてるらしい。いろいろ源泉辿っていくの楽しいねえ。

コメントを残す