今月26日公開の『哀れなるものたち』を観る前に、ヨルゴス・ランティモス監督作品を予習しておくか……ってことでU-NEXTで『聖なる鹿殺し』(2017)を観ました。評判通り面白かった!
あらすじ
心臓外科医のスティーブンは、美しい妻と2人の子どもに恵まれ郊外の豪邸に暮らしていた。しかし、父親を亡くした少年・マーティンを家に招待してから、子どもたちが突然歩けなくなってしまう。スティーブンが迫られる究極の選択とは……。
感想
ちょいちょい出てくるシュールな場面のせいで、胸糞サスペンスなのにむしろ笑わされるっていう不思議な体験をしました。何をしでかすかわからない人間って、道端や電車なんかで出くわしたらまず距離を置いちゃうけれど、こうやって安全な場所から観ていられる映画ってやっぱり最高だな〜と思う。コリン・ファレル演じるヒゲもじゃお医者さんの行動パターンが最後まで読めなさ過ぎて一切退屈を感じない120分でした。
ギリシャ神話の『アウリスのイピゲネイア』が映画の元ネタになってるという話もありますが(パンフ読んでないので公式に認めてるかどうかは確認できず)、神話知らない人でも十分楽しめる内容だと思います。鑑賞前にさらっと読んでおくと、共通点とか探せて楽しいかも。
ネタバレ感想
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すっごいシンプルな話だった。マーティンは一見異常者に見えるけど、良いことも悪いことも絶対にお返ししなきゃ気が済まない律儀なヤツなんだと思う。父親を奪われたマーティンは、代わりにスティーブンを父親にしようとしたけどそれが叶わなかったから、自分と同じ悲しみを味わわせる方向に転換したってわけね……(個人の見解です)。
罪悪感から援助はするけど自分のミスは絶対認めないスティーブンのせいで、子どもたちが苦しむのしんどい。謝ったら死ぬ属性の人、現実世界でもいるいる。
暗いお話なのに、登場人物たちのワキ毛への異常な執着とか、ニコール・キッドマン演じる美人妻の誘惑が個性的なとことか(娘にも遺伝してる)、スティーブンの異常行動とか、みんな無表情で演じてるのがツボすぎて気づいたら笑顔になってました。
スティーブンが絶対断りそうな場面で真顔でワキ毛見せてくれるの反則だし、終盤追い詰められて
「ワニの子の歯と鳩の血液と処女の陰毛を集めてきて日没までに燃やすんだ! 君の陰毛でやってみようか。いや1本もない! 全部ない!!」
って叫んで妻のお股事情が暴露されるのも面白過ぎて笑いをこらえきれなかった。
ギリシャ神話の『アウリスのイピゲネイア』では、生贄となるはずの娘イピゲネイアが最後鹿に入れ替わってたっていう話があるとかないとか。それと照らし合わせてみると、タイトルの“鹿殺し”の鹿はボブだったのかな。
ああボブ……可愛かったなボブ……。ボブ役のサニー・スリッチって『mid90s ミッドナインティーズ』の主演の子だったのね。気になってた作品なので今度観てみよう。
作品情報
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(The Killing of a Sacred Deer)
上映時間:121分
ジャンル:サスペンス
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演者:コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、バリー・コーガン、ラフィー・キャシディ、サニー・スリッチ、アリシア・シルヴァーストーン、ビル・キャンプ
関連作品
『ロブスター』(2015年)
同監督作品。「45日以内にパートナーを見つけなければ、自ら選んだ動物に変えられる」っていうわけわからん設定が気になる。こっちもコリン・ファレル主演。
『籠の中の乙女』(2009年)
これも同監督作品。ヒトコワ系らしいので期待。配信見放題にあったので近々観てみます。