8月19日から公開されている映画『オオカミの家』、さっそく観てきましたよ。
全国わずか3館でのスタートにも関わらず、初日2日間での興行収入は338万9,400円を突破。東京唯一の公開館であるシアター・イメージフォーラム(渋谷)では初日から3日間すべての回が満席になるほどの異例の大ヒットとなってるそうです。
今回は映画館の様子も含めてざっくり感想を残しておきます。本編の内容に関しては一応サイトに書いてある情報だけに留めてますが、絶対ネタバレ踏みたくないマンの方は鑑賞後にお会いしましょう。
『オオカミの家』あらすじ
美しい山々に囲まれたチリ南部のドイツ人集落。“助け合って幸せに”をモットーとするその集落に、動物が大好きなマリアという美しい娘が暮らしていた。ある日、ブタを逃がしてしまったマリアは、きびしい罰に耐えられず集落から脱走してしまう。逃げ込んだ一軒家で出会った2匹の子ブタに「ペドロ」「アナ」と名付け、世話をすることにしたマリア。だが、安心したのも束の間、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえはじめる。 怯えるマリアに呼応するように、子ブタは恐ろしい姿に形を変え、家は悪夢のような禍々しい世界と化していく……。
公式サイト「STORY」より
感想
公開3日目となる8月21日、渋谷のシアター・イメージフォーラムで朝イチ鑑賞してきました。映画が始まる15分くらい前に映画館に着いたら、入場時間(上映10分前)まで待機してる人たちが外にいっぱい。建物の外にポスターが貼ってあったので、待ち時間に記念撮影しました。
映画館入ってすぐの受付ではパンフレットやポストカードのほか、ドリンクも売ってます。ラインナップは生茶、ミネラルウォーター、午後の紅茶の常温500mlペットで各200円。フタのついた飲み物だったら持ち込みOKらしいので、冷たいものが飲みたい人や節約したい人は持参するとよいかも。ちなみに会場内での食事は禁止です。ポップコーンやチュロスは食べられませぬ。
鑑賞チケットは事前にネットで買っておきました。月曜サービスデーで大人1人1200円はかなりうれしい! シネコンのように発券機での発券は必要なく(一応発券機もあった)、メールでの購入画面を見せるだけで入れたので楽ちんでした。
階段を下りて劇場に入ると、ド平日の10時なのにぎゅうぎゅう。後から知ったけど満席だったみたい。映画予告で『ひなぎく』が流れて驚いた……ミニシアターの醍醐味。
予告編が終わると、同時上映の『骨』(上映時間:14分)から始まります。
2023年にチリで発掘された、1901年制作の世界初のストップモーション・アニメ……っていう設定で、実際には『オオカミの家』と同じクリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャが監督、製作総指揮を『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』のアリ・アスターが務めています。
予備知識なしで臨んだ私は完全にダマされて興奮してた(笑)。仮面を着けた少女が「骨」を使って死人をよみがえらせる儀式、作られたのは100年以上も前、しかも作者不明って! 胸が躍らないわけがない。映像や音の乱れもリアルで、資料写真まで入る徹底ぶり。
ただ、出てくる3人の名前はチリに実在した人物のものなのね。映画のパンフレットでは、ラテンアメリカ研究の新谷和輝(にいや かずき)さんがその辺りのことを詳しく解説されてます。観た後に読むとさらに想像が広がるかも。
映像そのものは、チリの歴史に全く詳しくない自分でも十分楽しめました。ぶっちゃけ本編よりもシンプルにもの悲しい雰囲気の映像で、個人的には好みでした。
『骨』の次はいよいよ本編『オオカミの家』(上映時間:74分)です。
わたしは徹底的にネタバレ踏みたくないタイプなのでこちらも予備知識ゼロで観たわけですが……これに関しては正直ある程度予習が必要だったなって後悔している。
公式サイトのイントロダクションでも触れられてるけど、『オオカミの家』は1961年にナチスの残党がチリに設立した拷問施設かつカルト教団「コロニア・ディグニダ」がモチーフになってます。リーダーが子どもたちにむけて映画を作るとしたら……という設定でつくられた映画と聞けば話もスッと入ってくるはず。
そんなわけで私はストーリーに関しては初見ポカーンでして、技術面に注目せざるをえなかった(笑)。ただ実写映像と立体アニメと壁画アニメのミックス、しかもワンシーンワンカット!っていういままで経験したことのない映像体験。絵を描いたり造形やったりしたことある人なら特に、その創作意欲と執念に圧倒されるはず。上映時間74分ということで観る前は短いかな~と思ったけど、実際観てみたらこの手間を想像して充分すぎるほどお腹いっぱいになりました。
映画自体は、チリやドイツなどの美術館やギャラリーで展示しながら制作したそう。確かに人の目がないと、こんな手間のかかる作業は続けられないかも……。パンフでは監督が「もし誰も映画を観てくれなくても、この3年間(※)が無駄になることはない」って語ってたのは印象的だった。
※制作期間は企画含めて5年間とあったけど、この発言での3年というのはおそらくギャラリーでの制作期間のことを指しているんだと思う
音にもこだわってて、9割はサウンド担当のクラウディオさんの自宅で録られた生の音を使ってるそう。気味の悪い映像なのに音はどこか心地いいなあと感じたのはこういうところから来てたのかもしれない。鳥の歩行音は特に気持ちよかった。
ポチっと押してネタバレを読む
ストーリーの感想としては、とにかくマリアのおままごとが歪(いびつ)で痛々しかった~。支配するために悪びれもなく子どもを不自由にするっていう負の連鎖がしんどい。ヤスリでちょっとずつ擦られるような精神攻撃が続いた後、ラストの救われなさと唐突な“視聴者への語りかけ”でとどめを刺されたような感覚。途中の子守歌で一瞬寝かけたけどおもしろかったです。
観てるときは『白雪姫』とか『三匹のこぶた』とかも関係あるのかなと一瞬思ったのだけど、そこまで重要な要素じゃなさそう。悪い大人が作った「逃げた先に自由なんかないぞ」っていう洗脳動画って感じなのかな。びっくりもグロもなかったので(当社比)ホラー映画より後味悪い系映画に分類されるのかな~と思います。
『オオカミの家』は現状、東京・神奈川・愛知の3県でしか観られないけれど、順次全国の映画館でも公開されるみたい。パンフレットも買ったので、追ってパンフレットのこととかコロニア・ディグニダのこととかブログに書けたらな~と思っています。
◆『オオカミの家』公式サイト
http://www.zaziefilms.com/lacasalobo/
\レオン&コシーニャ監督過去作品まとめました/