久しぶりの上野散歩! 「化石が1点も来ない異色の恐竜展」と聞いて気になってた『特別展 恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』を観てきました。
『特別展 恐竜図鑑』@上野の森美術館
今年3月、恐竜の発見地として有名な兵庫会場でスタートした『恐竜図鑑』展。わたしが今回観てきたのは巡回の東京展で、2023年5月31日(水)から7月22日(土)まで上野の森美術館で開催されてます。
パレオアート(古生物美術とか恐竜絵画を指す言葉らしい)だけを集めためずらしい展覧会で、絵画以外にも書籍や玩具、漫画原稿など幅広いコレクションが3フロアにわたって展示されてました。
会場入ってすぐのスペースは、いかにも“図鑑”展っぽいフォトジェニックな雰囲気。ここ以外も一部の作品を除いて撮影OKだったので、個人的に気になった作品の写真を以下にアップしておきます。
気になった作品あれこれ
前情報から楽しみにしてたロバート・ファレンの《ジュラ紀の海の生き物―ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)》。想像の3倍大きかった! 画面右側でプレシオサウルスの首にかぶりついてるのはイクチオサウルスちゃん。実はこの後の研究で、肉食ではなく魚食であることがわかっているらしい。なので実際にはありえない構図なんだけど、こういうおもしろさは黎明期の恐竜画ならでは。周囲の妙ちきりんな生き物たちも気になる。
ジョン・マーティンの《イグアノドンの国》。遠目に見るといい感じの雰囲気なんだけど、真ん中で絡み合ってる恐竜たちの表情を一度見たらもうそこにしか目がいかない。
インターネットミーム化してる猫のほのぼの画像みたいな趣がある。
ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズの《白亜紀の生き物―ニュージャージー》では、ゴジラ立ちしてる恐竜たちがお目見え。そうそう、恐竜と聞いて私が一番に想像するやつってこういうヤツらかも。
アップにしても情報量が多いのなんの。左側2組はおそらく捕食シーンなんだろうけど、鑑賞するときのテンションによっては仲睦まじいカップルにも見えてくる……かもしれない。取っ組み合う恐竜の方を振り向いて見守る恐竜の姿勢も好き。なんか人間味あるというか。
パレオアートの2大巨匠に数えられるアメリカ人画家、チャールズ・R・ナイトの作品。一緒に観てた友達が「この人の色調、ゆめかわだね」って言ってて笑った。確かにゆめかわいい〜。
2大巨匠のもう1人、ズニデェク・ブリアンの《ダンクルオステウスとクラドセラケ》。これは恐竜ではなく古代の魚類だね。センター飾ってるのがダンクルオステウスちゃんです。はちゃめちゃに顎が強いらしい。見るからに強そうだ。
同じく顎強い系魚類シリーズ、F・ジョンの《ディニクティス》。絵で見るとシュールだけどこれで巨大魚だったらしいから、実際に居たら軽めのホラー映画撮れる怖さかも。
マチュラン・メウの《プテロダクティルス》は特に良かった! 細かく描き込んでる絵が多いなか、これは抽象的で一見恐竜画っぽくない感じ。どっかのお金持ちの豪邸とかに飾ってありそう(勝手すぎる想像)。
作者のマチュラン・メウ、名前を知らなかったので調べてみたらフランスの画家でイラストレーターらしい。高畑勲や宮崎駿に影響を与えたアニメーション作家フレデリック・バックの師匠としても知られているそうだ。めっちゃ偉人だった。
ニーヴ・パーカーの《メガロサウルス》。わたし巨大恐竜のちっちゃいおてて大好きなんだけど、こいつのおてては群を抜いてかわいい。たまらんバランス。
島津製作所の《前世紀動物模型(ブロントサウルス)》。こういうムッと閉じた口に弱い!
現代では精密機器や医療機器で有名な島津製作所。かつては標本や人体模型を作っていた時代があったのね~といろいろ勉強になることばかり。
日本に「シュルレアリスム」を紹介した人物として知られる福沢一郎の連作《爬虫類はびこる》(写真上)と《爬虫類滅びる》(写真下)。恐竜は政治風刺の作品モチーフにも使われてたんだな。
マルシンのソフビ人形シリーズ。いかにもおもちゃな色使いもいいね。
立石紘一の《アラモのスフィンクス》。自由の女神風の大きな恐竜の周りには、タイガー立石らしくやっぱりトラたちが跳ねてる。東京都現代美術館のサイトにあった作品解説によると、この恐竜は「不自由の女神」なんだって。難しいことはわかんねえけどよ、良い絵だ。
ダグラス・ヘンダーソンの《マイアサウラの営巣地》。マイアサウラは恐竜の中で初めて子育てをおこなっていた可能性があると言われてる恐竜で、名前には「良い母親トカゲ」という意味があるらしい。私じゃん。この早朝みたいな空気感すご~く好きだ。
ルイス・V・レイの《カルノタウルス・サストレイ》。この絵の何が良いって、恐竜の正面顔が描かれているところ。立体物ではいくらでも正面から見られるけど、正面の顔描いた絵ってなかなかないんじゃなかろうか。
まとめ
そんなこんなで、最後のフォトスポットに到着です。やー、よかった!『ジュラシック・パーク』も『ジュラシック・ワールド』も熱心に観てないし、恐竜なんてT-REXくらいしかパッと思いつかないわたしでも十分に楽しめる展覧会でした。研究に基づいた緻密な絵もよかったけど、やっぱり「失われた世界の想像/創造」っていう展覧会のサブタイトルどおり、作者の想像(創造)を爆発させた初期の作品が個人的にはグッときました。
図録は撮影不可の作品も収録されてて3000円で、装丁もめちゃんこ良かったので絶対“買い”です。わたしが行ったときも結構多くのお客さんたちが買ってた。あと物販で5000円以上買い物するともらえるポスターが想像以上にデカくて、もらった友達が業者みたいになってて笑った。おつかれさまです!
今回の展覧会でツボだった注意書き。手がちゃんと恐竜になってる~!